深海を舞う新種の魚「オトヒメコンニャクウオ」公表のお知らせ
アクアマリンふくしまで採集した深海魚が、新種「オトヒメコンニャクウオ(乙姫こんにゃく魚)」として公表されました。(生存個体はなく、展示は行っていません。)
オトヒメコンニャクウオは、これまで近縁種のハゴロモコンニャクウオと同種と考えられていましたが、色彩の違い、感覚孔の数の相違、遺伝的な距離があることなどから、京都大学の甲斐嘉晃博士、中央水産研究所の柳本卓博士、アクアマリンふくしまの共同研究によって、日本魚類学会の英文誌に新種として公表されました(Matsuzaki et al.,2020: Ichthyological Research https://doi.org/10.1007/s10228-020-00734-w)。
生存中は、エサの匂いがすると大きな胸びれをひらひらさせながら、まるで海中を舞っているような行動が確認されます。その美しい姿が竜宮城の「乙姫様」をイメージすることから、「オトヒメコンニャクウオ」という標準和名が考案されました。
甲斐博士は、「コンニャクウオの仲間は約150種類いますが、体の半分ほどもある長い胸びれを持つ種はとても珍しい。知床の海では、この1年で相次いで新種や日本初記録の魚類が確認されており、このように大型で特徴的な種類が、まだ見つかる知床の海のポテンシャルはすごい!」とのコメントしています。
当館でも8ヶ月間(2016年9月3日採集、2017年4月20日死亡)生存した個体もいたことから、今後、長期の生体展示を行い生態の解明につなげたいと考えています。
- オトヒメコンニャクウオ
- クサウオ科コンニャクウオ属
- Careproctus shigemii
公表日 | 2020年2月 |
---|---|
共同研究 | 京都大学 甲斐嘉晃博士、中央水産研究所 柳本卓博士 |
体長は最大約30cm。体の半分ほどにもなる長い胸びれが特徴です。この胸びれをひらひら動かしながら泳ぎ、エサを探します。
エサであるエビが多く住む岩場で確認され、普段は流されないように、大きな吸盤で岩にくっついています。
オトヒメコンニャクウオとハゴロモコンニャクウオの違い
一番分かりやすい違いは、背ビレから臀ビレの外縁が黒色かどうか
オトヒメコンニャクウオ
- 生息域
カムチャッカ半島、千島列島、羅臼沖 - 生息水深
浅い(200~300m) - 体色
背びれから臀びれが黒縁 - 頭部感覚孔のパターン
一つ少ない(2-6-6-1) - 幽門垂数
多い(30-35) - 胸びれ下葉の長さ
短い(8.2-9.9%) - 成熟卵の最大直径
小さい(5.2mm) - 遺伝的な距離
大きい(2.8%)
ハゴロモコンニャクウオ
-
- 生息域
アリューシャン列島・ベーリング海、カムチャッカ半島・千島列島・羅臼沖 - 生息水深
深い(500-800m(羅臼沖))) - 体色
背びれから臀びれが白縁 - 頭部感覚孔のパターン
一つ多い(2-6-7-1) - 幽門垂数
少ない(20-31) - 胸びれ下葉の長さ
長い(15.9-25.6%) - 成熟卵の最大直径
大きい(7.8mm)
- 生息域